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八巻 敦子
塩竃の袖野田は、坂と細い道が多い。それを知れたのは、今回の取材先に辿りつくのに迷ったお陰である。その日は晴れといえども、風が容赦なく吹いていて寒かった。しかし、まごころサービスさんを訪れてからその間の時間はとても暖かい空気に包まれた。まず、ドアを開けて驚いたことは、なにか、友人の家に遊びに来たような、アットホームな雰囲気だったことだ。私たちがお邪魔した金曜日は、週に1度のデイサービスの日であり、まず利用者のかたとこたつに入りながら、ゆったりお話しする機会を与えて頂いた。ほとんど、お話しを聞いていただけになってしまったが、貴重なひと時だった。
そして、いよいよ取材をさせて頂いた。代表者の坂井さんの言葉の端々から感じたのは、「今を楽しく」ということである。“なんとか手伝いたい”、“自分の正しいと思っていることを、責任をもって続ければいい”など。とても共感できた。そして、当たり前にあるはずの人間的な感情であるとも思った。これは、ボランティアの原点なのかもしれない・・・。取材の途中で、お昼の時間になり、スタッフである主婦の方々が作ってくださったお弁当をごちそうになった。その場にいる利用者のかたと、坂井さんはじめスタッフのかた、みんな一緒に食べる。これは、需要者、供給者の枠を超え、リラックスできる時間であると感じた。だから他にも、こういう時間をもつ団体が増えるといいと思う。ちなみにメニューは、主婦のみなさんがその都度、話し合って決めているそうだ。味も見た目のバランスもとれていて、食べること、食べられることが改めて幸せに思えた。
現在、まごころさんは、福祉車両1台(昨年2月に審査を突破し、日本財団から支給されたもの)と、自家用車1台を使って、移送サービスをおこなっている。今は、固定客の家から病院への往復のお手伝いというパターンだ。目の前のできることから、という切実な思いをのせて、今日も坂道を着実に走っている。そして、これから望まれることは、地域と地域でのサービスの“バトンタッチ”であると、おっしゃられていた。それが、より早く実現することを願わずにはいられない。今回私は、ボランティアのあるべき姿をまた1つ発見できた気がする。それは、「理屈じゃない、まごころ」である。
2004年3月12日取材
東北学院大学2年 葛巻卓朗
塩竃市内を中心とし、また塩竃周辺の市町で活動を実施しているNPO法人「まごころサービス塩竃センター」は、介護保険の認定に関係なく、家事援助や介護援助や移動サービスをおこなうまごころサービス事業、介護保険事業、事務所を利用してのミニデーサービス事業と多種多様な活動を実施している。今回取材に伺った日はちょうどミニデーサービス「ふれあいまごころの家」を実施している日だったので、一緒にお茶を飲んだり、おいしいお弁当を食べさせてもらったりし、場のふいんきを味あうことができ貴重な体験をすることができました。今回も移動サービスの話しに留まらずいろいろなお話しを聞くことができました。
「まごころサービス塩竃センター」で移動サービスを本格的に始めたのは2年ぐらい前からだが、その前から自家用車を使用してボランティアでおこない、現在の移動サービスの利用は主に病院の送迎だそうだ。病院の送迎の話しを聞いていて、病院の送迎に限らず移動サービスに必要なものはネットワーク作りだと再認識した。坂井さんの話によると仙台市内にある病院にいくとしたら、一日がかりになってしまい人も車も他のサービスに使えなくなってしまうと言う。ここで言いたいのは仙台の病院にいく人が悪いと言うことではない。移動サービスは需要が多いが供給が少ないのが現状であるので、いかにして多くの人たちに安心して利用してもらえるかを考えていきたい。もし、今回のような場合、仙台市内にある団体との間で利用者を乗り継ぎのような形で移動サービスを行なうことができたら半分の時間でサービスを提供することができ、その時間を有効利用することもできると思う。そのためにはネットワーク作りが必要不可欠となってくる。しかし、ネットワーク作りは簡単にはいかないのである。各団体によって利用料金の違いや、もし二つの団体によって移動サービスを受けたらどちらの会員になればいいのかなど問題点はいろいろと考えられる。これは一人や二人で考えてどうこうなる問題でもないし、すぐにできあがるものでもないが、県内の団体みんなで時間をかけて話し合っていき、考えていかなければならない課題だと思う。
前回の取材の中でも考えさせられたことだが、地域の行政との係わりを聞いてみた。行政は法人化しないと耳を傾けてくれなかったと言う。法人化してやっと耳を傾けてくれるようになったそうだ。耳を傾けてくれるようになったということはいいことだと思うが、法人化している、していないに関係なくこういった活動に目を向け活動を援助していってもらいたい。行政が耳を傾け、目を向けることによって、団体は活動の幅が広がり増えていくのではないだろうか。
最後に、坂井さんは冗談で言ったのかもしれないが「戦車を作らすなら福祉にまわせ」という言葉が印象に残りました。この言葉をそのまま意味をとると、もっと福祉のためにお金を使ってくれだが、そういう意味だけではなく戦車なんかより役に立つことをやってやろうという、自分たちの活動に対する想いがこもっているように感じました。また、快く取材を協力してくれ、おいしいお弁当までたべさせていただいた「まごころサービス塩竃センター」の皆様、一緒にお茶を飲んだ「ふれあいまごころの家」にいらしていた皆様にも感謝したい。
2004年3月12日取材
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